「ほらほら、僕を殺すんでしょ?早く僕を殺さないと君が死んじゃうよ」
寿永隊長が苦しんでいる姿を見て、恍惚とした顔をする切碕。
恐らく、寿永隊長が苦しんでいるのは切碕がかけた呪いの影響だろう。
呪いを解く方法は分からない。
でも、切碕を殺せば、呪いを解くことが出来るかもしれない。
そう思って傍らに置いていた拳銃を取ると、銃口を切碕に向けた。
「紅緒、父親である僕を殺すかい?」
「殺すよ。それに、私はあんたを父親とは思ってない。私の父親はあんたが殺した安倍明晴──浅井秀人……」
実父は切碕かもしれない。
でも、育ててくれたのは浅井秀人という偽名を使っていた安倍明晴。
認めたくはないけど、私にとって父親はその人しか考えられなかった。
「……そう。なら、競争だね。僕が凌君を殺すのと紅緒が僕を殺す……どちらが早いかを」
薄気味悪く笑う切碕の姿に鳥肌が立った。
奴はまるで自分が負けると思っていない。
私が切碕を……人を殺せないと分かっているようだった。
……そう、私は人を殺せない。
どんなに口で殺すと言っていても、実行には移せない。
大切な人が殺されても、その人の仇を殺すことも出来ない。
現に切碕に向けている銃口は震えている。
こんな私では奴を殺せない──。



