「浅井さん、何処に行く気だ!?」
入院服を脱ぎ捨てて、Yシャツに袖を通していると広瀬さんが肩を掴んできた。
「何処って決まってるじゃないですか。二人を助けに行くんですよ」
広瀬さんの手を振り払ってYシャツのボタンを閉めると上着を羽織った。
「怪我人が馬鹿を言うな!待ってろ、今、江に連絡して──」
「あの二人は私の兄です!妹である私が助けに行かないと!」
私の怒鳴り声に、広瀬さんは何も言えなくなった。
あの二人のことだ、考えていることは分かってる。
どうせ、私を守る為だろう。
私を安倍明晴達の手から守るために自らを犠牲にしようとしているのだろう。
そんなこと、私は望んでいない。
私は誰かを犠牲にして生きていたくなんかない。
私は下も履き替えてブーツに足を入れると、再度広瀬さんを見た。
「アジトの場所を教えて下さい」
「教えないって言ったら?」
「力ずくにでも」
もう手段を選ぶつもりはない。
仲間にそんなことはしたくないけど、こうでも言わないと広瀬さんは教えてくれないだろう。



