「ご飯食べないなら私が食べちゃうよ?」





アリス様は何処を見つめているか分からない紅緒にそう声をかけ、僕が作ったサラダのブロッコリーを摘まんだ。





そして、紅緒が頷く前に自分の口に放り込む。





……手掴みってこの人、お嬢様だよね?





ああ、この人にお嬢様の常識を押し付けちゃいけないんだったな……。





「あ、美味しい。これ、味付け何?」





「塩とコショウとオリーブ油です」





「シンプルだけど美味しいね。今度、和泉に作らせよう」





そう言って、彼女は子供のようにニカッと笑った。





でも、すぐに真剣な顔になって紅緒を見た。





「……紅緒ちゃんさ、死にたいなら私が殺してあげようか?」





「はあ!?何言って──」





彼女の突拍子もない言葉に僕は身を乗り出すけど、羽取さんに肩を掴まれて止められた。






「羽取さん!?」





「紅斗、黙って見てろ。大丈夫だ、アリスに任せておけ」




羽取さんは言葉では彼女を貶していても、本心では信頼しているらしい。





その証拠に、羽取さんは珍しく穏やかな顔をしていた。