「……やっぱりそうなんだ」
芦葉さんは崩れ落ちた洋館の方を見ながらポツリと呟いた。
多分、死ぬ人の魂が見える彼には寿永隊長の姿が見えているのだろう。
芦葉さんに寿永隊長の姿が見えているということは寿永隊長は──。
「こんなはずじゃなかった……」
ふと、聞こえた声に私は顔を上げて、その人物の姿を確認すると掴みかかった。
「紅緒!」
紅斗が私を羽交い締めにして、その人物を守るように佐滝さんが立つ。
「こんなはずじゃなかった、なんて言葉で済むと思ってるんですか!?貴方が……汀様が寿永隊長を……ッ!」
私はその人物──、汀様を睨み付けた。
「俺はただ……兄さんに嫉妬して……。でも、まさか、本物の爆弾だったなんて……」
汀様は青ざめた顔に手を当てて、力が抜けたようにその場に膝を付いた。
何で安全を身近に置き、母親からも愛されて、彼より恵まれている汀様が彼に嫉妬するの?
本物の爆弾だって知らなかったとしても、何で血の繋がった兄をそんな危険な目に合わせられるの?
私はその場に再び座り込んだ。