紅の葬送曲



俺は体を起こすと、江からティーカップを受け取った。





「それで、何でスマホ見つめてたの?」




江はニヤニヤと楽しそうに笑いながら俺を見てくる。




「それは紅緒と話していたからだよ」




すると、少し前に執務室から逃亡した紅斗が江と同じくニヤニヤ顔で開け放たれたドアから顔を出した。





「紅斗、余計なことを──」




「『お前には赤紫色が似合う……と思う』だって!天然スケベじゃん!」




天然スケベって何だよ……。





「凌は天然というか無自覚スケベだよ」





無自覚スケベって何だよ……。





「無自覚スケベ!ちなみに僕はスケベじゃなくて、シスコンの変態だから」





「あ、俺もかな?」





「「同志だー!シスコン、イエーイ!」」




紅斗と江は同じ意見だったようでハイタッチを交わしている。





……こいつら、敵同士だったのに意気投合するの早くないか?





俺には弟しかいないから姉や妹を大切に思う感じはよく分からない。





でも、それは俺が弟である汀を大切に思う感じと同じなのだろう。