紅の葬送曲

《凌side》



俺は浅井にかけた電話を一方的に切ると、椅子の背もたれに寄りかかった。




手にはまだスマホを握ったままで、そのまま背もたれに全体重を預ける。





「まったく……俺もどうかしてるな……」





天井を見上げながらため息を吐くと、スマホのディスプレイを目の前に持ってくる。




さっきまで公休の浅井と通話していた。





眼鏡の在処を聞くだけだったのだが、浅井の友人に電話が代わり彼女に似合うドレスの色を聞かれた。




双子でも紅斗と似てはいないが、浅井も整った容姿をしている。





色白の彼女なら淡い色よりも濃いめの色が似合う気がした。




でも、赤紫色と言ったのは無意識だった。





何故、その色が合うと思ったかは分からない。




赤系は合いそうだと思っていたのは事実だけども……。





「なーにスマホ見てにやけてるの、凌?」





ふと、江の調子の良い声と共にスマホと顔の間にティーカップが差し出された。





「江」





江は最近やっと忌引から復帰した。





でも、まだ菖の死を受け入れられないのか、目の前の姉の席を見つめていることが多かった。