「私は切碕様の復活を望んでいるわけではありません。幼い私と姉達は彼を兄のように、父のように慕っていました。でも、今は違います……憎いです」
うつ向く彼女からは憎しみの感情が伝わってくる。
彼女に何があったかは聞くべきではないのかもしれない。
でも、分かったことは彼女も安倍明晴に脅されてやっていたことで、本心ではなかったことだ。
「……紅斗様、貴方がこちら側の人間だと明晴は気付いています。このままでは貴方はあの男に殺されます」
アンジェロさんは顔を上げると紅斗を見つめた。
「殺したいなら殺せば良い。でも、紅緒に手を出すようならあいつを道連れに死んでしてやる」
「……そうですか。紅斗様、貴方を私に守らせてもらえませんか?」
彼女の言葉に、紅斗は険しい顔をする。
「貴方は切碕様に似ている。でも、切碕様とは違う。貴方に私は賭けたいんです、明晴に一泡ふかせる為に……」
さっきまで闇しかなかったアンジェロさんの目には光が宿っていた。
紅斗の存在が彼女の希望なんだろう。
でも、これは紅斗が決められることじゃない。
紅斗を守るということは彼女も翔鷹にいるということになる。



