「大丈夫……です……。あの子に行われた拷問に比べたら……」




アンジェロさんはぐっと膝の上で拳を握りしめた。





「……アンジェロさん、何で貴女は小鳥遊さんに変装していたんですか?」




「………………」




「大丈夫ですよ、ゆっくりで良いので話してください」




私は膝の上で固く握られた彼女の手をそっと握った。





「ゆっくりでは困るんだが……」




「凌君、しー!だよ」





「ふざけるな、俺は子供か?」




そんな寿永隊長と紅斗の会話が聞こえたけど、私は目の前の彼女から視線を外さなかった。




「明晴に……命じられたんです……」





すると、アンジェロさんはぽそりと呟いた。




「安倍明晴……、やっぱりあの男か……」




寿永隊長は紅斗と手を組み合って取っ組み合いのようなものをしていたけど、アンジェロさんの言葉にこちらを睨んだ。