「紅斗、紅緒」
「「寿永さん！」」
それから寿永さんは忙しい仕事の合間を縫って、息子の凌君を連れて僕達の元にやって来た。
僕と紅緒は寿永さんの来訪が嬉しくて足に抱き付くと、彼は必ず二人一緒に抱き上げてくれる。
父親を知らない僕達からすれば、彼は本当の父親のような感じだったのかもしれない。
すると、彼の息子である凌君が顔を真っ赤にして僕達を睨んでくる。
「そこは僕と汀の場所なんだぞー！」
「良いから、凌」
「良くない！」
頬を膨らませる凌君に彼は困ったように笑って、僕達を下に下ろした。
そして、凌君の顔を覗き込む。
「凌、此処に来たときはわがまま言わないって約束でだろ」
「だって……、父さんは僕と汀の父さんだもん……」
頬を膨らませていた凌君だけど、いつしかその目には涙を浮かべている。
