「俺は誰かを誰かの代わりなんて思いたくない。菖は菖、浅井は浅井だからな」
寿永隊長は私の手を頭から退けさせると、ソファーから体を起こした。
そして、目に残っていた涙を袖で拭う。
「菖の代わりなんていないが、お前の代わりもいない。だから、そんな顔するな」
そう言って、彼は慣れない手つきで私の目に浮かんだ涙を拭った。
「私は……結局強くなれないんです……。またこうやって泣いて……私は貴方に悲しいなら泣いて欲しかっただけなのに……」
「お前は充分強いよ。人のために涙を流せる優しい強さを持ってる」
彼は小さく笑った。
寿永隊長を慰めるはずが逆に私が慰められてる。
でも、彼の言葉が心にじんわりとしみた。
「強くなるのはゆっくりで良いと言っただろう。俺は何処にも行かないから」
優しい声音の彼の言葉はまるで子供をあやす親のようで心地好い。