紅の葬送曲



とある廃屋。




「──何?それは本当ですか、アンジェロ」





明晴は廊下を歩きながら隣を歩く女の言葉に、眉を跳ね上げる。





「本当だよ。だって、あたしがこの耳で聞いたんだもん」




「とはいえ、信じがたいことです。コピーがある限りあの方が蘇らないなんて……」




彼女の報告に、明晴は口許を押さえて震えた。




やっと会えると思った己の神が蘇らない。




神に会うがために神と同じ方法で殺人を犯し、会えることを糧に生きてきた。




それなのに……。





「……アンジェロ、寿永からそのコピーを奪いなさい」




明晴は口許を押さえたまま、隣にいる女に命じる。





「そうしたいのは山々なんだけど、コピーは寿永の金庫で保管してるみたいで容易には──」




女──アンジェロはそれ以上言葉を発せなかった。