「……お前が言うことは正しいのかもしれない」
寿永隊長は深く息を吐くと、困惑した顔で私を見た。
「俺はお前が父さんを殺す場面を見た訳じゃない。今思えば、いくら切碕の子供と言えど大人を殺すのは無理だ。ましては翔鷹の隊長だった父さんだ、有り得ないと言った方が早い」
寿永周さんは翔鷹創設時の隊長で、狙撃や体術全てにおいて彼に勝る人がいないほど優れた人だった。
人柄もよく、部下からも慕われる人だったとお父さんから聞いていた。
でも、そんな人を殺したのがお父さんだった。
何の為に寿永周さんを──。
「でもさ、何で浅井ちゃんはそれを忘れていたわけ?しかも、周さんを殺したことも忘れて、犯人である浅井秀人と暮らしてたんでしょ?」
小鳥遊君は混乱しているのか口調を少し強めて私に問い掛けてくる。
そんなこと私が聞きたいことだ。



