紅の葬送曲



彼の見た光景では彼の父親を殺したのは私。




でも、私が今思い出した記憶で彼の父親を殺したのは──。





「私じゃない……」




「は?」




「寿永周さんを殺したのは私じゃありません!私の義父……浅井秀人です!」





「「!?」」




寿永隊長と小鳥遊君が息を飲む。




今思い出した記憶で寿永隊長の父親を殺したのは私の義父、浅井秀人だった。





そして、私は紅斗とお父さんから逃げていて、寿永周さんが助けてくれていた。





何で私と紅斗がお父さんに追われていたかは思い出せない。




それに、私は追われていたというのにその後何事もなかったようにお父さんと暮らしていた。





でも、それは記憶がなかったから。




一緒にいたはずの紅斗のことも忘れ、寿永隊長と会っていたことも忘れ、お父さんが寿永周さんを殺したことも忘れていた。




これだけのことを忘れているなんて普通有り得るだろうか?




──有り得ない気がする。