『……これで邪魔者はいなくなった。さあ、二人共おいで』
血に濡れた手を私達に差し出してくるのは私のよく知る人。
『紅斗、逃げて!』
そう叫ぶのは私で、逃げずに私の前に立っているのは≪誰か≫ではなく紅斗。
でも、その影は近付く足音に気付くとその場から急いで去って行った。
『父さん!』
地に倒れた男の人をそう呼んだのは幼い彼──。
「浅井!」
私は寿永隊長の声と揺すられたことで我に返った。
割れるくらいの頭痛は治まっている。
でも、訳が分からない記憶を思い出し、頭の中がぐちゃぐちゃだ。
「寿永隊長……」
私は肩を掴んでいる寿永隊長の服を握ると、絞り出すように彼に問い掛けた。
「貴方は私が寿永周さんを殺す所を見たんですよね?」
「……俺が駆けつけたのは殺した後だ。返り血をお前が浴びていたからそう判断した」
確かにさっきの思い出した記憶と彼の父親言っていることは合点が行かなくもないからそう判断してしまう。



