紅の葬送曲



「横書きの文字を書くときは左から右に書いていきます。それは右利きも左利きも同じ」




手紙の文字には左から右に擦れたような跡があって、これは多分書いた後の文字に手が乗ったことにより出来たものだと思われる。




つまり……。




「左利き!」





小鳥遊君はやっと納得したのか、パチンと指を鳴らした。




「右利きではこんなことにはならないはず……。下書きしたような形跡もないし……」




「浅井秀人が両利きだった可能性は?俺は基本的に左しか使わないが、右も使える」




寿永隊長は両利きみたいだけど、お父さんが両利きだった可能性は低い。





「それはないと思います。父は左利きを矯正する人でしたので」






お父さんは左利きは不便だからと矯正する人だった。





「……お前も両利きか?」





「当たりです、寿永隊長。普段は右手を使っていますが、ふとした時に左を使ってしまうんです」




両利きだったからこそ、この文字の擦れに気付けた。