紅の葬送曲



「浅井秀人が書いたものじゃないってどう言うことだ?」





「これを見てください」




私は混乱しているであろう二人に見えるように、デスクに手紙と手書きの書類を並べた。





「パッと見るとどちらも同じ文字ですよね?」




「うん、そうだね」




「でも、此処を見てください」




これが違う人が書いたものだと決定付ける証拠は手紙に付いた≪汚れ≫だ。





「この汚れ、右利きである父には付けることが出来ない汚れなんです」





私の言葉に、寿永隊長はハッとした。





彼なら気付くと思った。




何せ、この手紙を書いたのは──。





「この手紙を書いたのは左利きの人です」





そう、この手紙を書いたのはお父さんではない左利きの人だ。





「寿永隊長、左利きの貴方ならこの汚れが付く理由が分かりますよね?」




「ああ」




私が言いたいことはもう寿永隊長には伝わっているらしい。




でも、小鳥遊君が頭を傾げているから説明した方が良さそうだ。