「……愛されることを知らない奴が誰かの苦しみに気付けるはずがないか……」





「え?」




自嘲気味に呟いた俺に、彼女は眉をひそめる。





「……お前の気持ちは分かった。もう補佐官を辞めるのを止めない。お前の自由にしろ」




突然、俺がそんなことを言い出したものだから彼女は動揺しているようだった。




「俺はお前を殺さない。死にたければ、死ねば良い」




「寿永隊長?」




「……俺はお前が苦しんでいるのを見て何とも思っていない。むしろ、いい気味だと思っている」




俺は涙を拭うと、呆然とする彼女を見た。





「これが俺の本性だ。俺自身、こんな性格だとは思わなかったよ」




彼女から視線を外すと、奥歯を食い縛りながら手のひらを額に当てた。




「……最低だろ、俺は」




人の苦しみが分からず、むしろ楽しんでいる。




我ながらクズな性格をしていたみたいだ。




すると、彼女の小さな笑い声がした。





俺は驚いて彼女の方を見た。