俺は自分自身の知らなかった本性に、吐き気がした。
その本性は俺が拒み続けたあの人に似ている。
息子に家の為に死ぬことを望み、切碕の関係者を拒む俺が最も嫌う母親に──。
……あの人は俺を愛してない。
だから、俺に死ねと言えるんだ。
俺は彼女を別に何とも思っていない。
だから、苦しむことを望み、苦しんでいても分かってやれない。
ふと、目の前の彼女が驚いたように目を見開いた。
そして、俺の方に手を伸ばしてくると頬に触れた。
「何で……泣いてるんですか?」
彼女の言葉に驚いて頬に触れると、そこは確かに濡れていた。
「何故俺は泣いてる……?」
涙が溢れてくる目を拭うが、それは止まらず溢れてくるばかりだ。
何故、俺は泣いてる?
泣くことなんかもう忘れたはずなのに、何故……?
──ああ、そうか。
俺は無意識に望んでいたんだ。
母親に愛されることを──。



