俺は彼女の問いに何も答えられなかった。
すると、それを肯定と受け取ったのか彼女は悲しそうに笑った。
「貴方も私が生きていることを拒むんですね……。なら、あの時に殺して欲しかった……」
「……っ!?」
あの時とは彼女が自分自身の正体を知り死を望んだ時だろう。
あの時、俺は彼女に殺したいほど憎いと伝えた。
彼女が父さんを殺した時を俺は目にしている。
仇は切碕ではなく、彼女だ。
でも、俺は彼女を殺さず、生かして傍に置くことを望んだ。
それは今思えば、彼女に対しての復讐なのかもしれない。
彼女を仇と言っておきながら傍に置き、俺自身が弱っていく姿を見せる……。
そうすれば、彼女が死ぬよりも苦しい想いをする。
──俺は無意識にそれを望み、彼女を拒んで名前を呼ばなかったのか?



