ボブガットの黒く艶のある髪が彼女の顔を隠しているが、眠っているようだ。
俺は顔を隠す彼女の髪に触れると、すくようにして退かした。
そして、息を飲んだ。
「泣いたのか……?」
長い睫毛が伏せる彼女の目は赤く腫れていて、頬には涙の跡が残っていた。
俺が気を失っている間にあの人に何か言われたのか?
そんなこと思っていると彼女の瞼が揺れ、ゆっくりと開いた。
「寿永隊長……?」
寝惚けながら俺の名前を呼ぶと、俺が起き上がっているのを見てはっとしたのかガバリお起き上がった。
「寿永隊長!体は!?体の調子は……っ」
「まだ少し胸は苦しいが、平気だ」
「良かった……」
彼女は安心したように肩を落とした。
……何故、彼女はいつも自分より人を心配する?



