≪凌side≫



「う……ん……」




目を覚ました時、俺はベッドの上にいた。




目だけを動かして辺りを見渡せば、そこが一年前まで自分が使っていた寿永本邸の自室なのだと理解する。





何故、俺はベッドに寝ている?




あの人が彼女を傷付けるようなことを言ったから反論したまでは覚えている。




でも、途中で胸が苦しくなり、意識が遠くなるのを感じた。




完全に意識が途切れる前に彼女の俺を呼ぶ声が聞こえた気がした。





「……俺は気を失ったのか?」




辺りはもう暗い。




自分がどれだけ気を失っていたのか分からないが、だいぶ長く気を失っていたらしい。




俺はまだ少し胸の苦しさは残るが、ベッドから起き上がった。




すると、ベッドの脇にもぞりと動く影を見つけた。




──彼女だった。




彼女は椅子に座ってベッドに突っ伏すような体勢でいた。