帽子は風にのってフワリフワリと飛んでいく。


和斗が手を伸ばしても届かない。


1年生の子が泣きだして、和斗は更に慌てた。


「待って! 帽子!」


そう言いながら帽子を追いかける。


少し走ったところで風が止まり、黄色い帽子がゆっくりと空から地上へと近づいて来た。


「よかった……」


そう呟いた次の瞬間、手の届く場所まで下りてきていた帽子を、白くて華奢な手が掴んでいた。


驚いてその相手を見ると、愛花ちゃんだったのだ。


愛花ちゃんは1年生の帽子を手にとると、和斗へ笑顔を向けた。


「はい、帽子」


そう言われても咄嗟に受け取る事ができなくて、和斗は立ち尽くしてしまった。


「どうしたの? 1年生の子の帽子なんだよね?」


「う、うん……」


愛花ちゃんの手からようやく帽子をうけとった和斗は、耳まで真っ赤になっていた。