**
旅行の日から1、2週間が経った。
夏休みももう1週間だ。
あの旅行の日以降、叶多は私の過去に触れてくることもなく、何も知らないように振る舞ってくれている。
本当に忘れてるんじゃないかってくらい普通だ。
「ちょっと親父のところ行ってくるから。今日は夜帰ってこないつもり」
お昼前、叶多がそう言ってスーツのネクタイを結んでいた。
スーツ姿の叶多は初めて見た。
「わかった」
やっぱりスーツが必要なくらいしっかりした所なんだな…。
そんな人に、私なんかが関わってもいいんだろうか。
「じゃあ行ってくる」
「うん。頑張ってね」
何が行われるのか知らないけど。
「あぁ」
叶多は玄関の方へと消えた。



