『おかぁさん!おとぉさん!!離してよっっ』
水が冷たい。
満月が皮肉なほどに光っている。
私は、月明かりに照らされながら、夜の海へと引きずり込まれる。
実の両親の手によって。
身長が低い小4の私は、あっという間に胸の高さまで海の水が来る。
『ギャハハハハ!』
『アーハッハハハッ!』
狂ったように笑いながら、深く深くへと着々と私を引きずり込む両親。
『や……っっ』
もう口まで水が来ていた。
苦しい─
苦しい…
鼻まで水が来た。
目まで来た。
全身、水の中─。
この苦しみから早く解放されたい……。
この頃から頭がキレていた私は、意識を失ったフリをして解放されるように仕向けた。
『あーあー。死んじゃったよぉ。呆気ないもんだねぇ』
『つまんねぇ。帰ろーぜ』
全てを理解した。



