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「結柚ちゃん」
涙でグチャグチャの顔を隠すため下を向いて歩いて帰ろうとしていたら、背後から私を呼ぶ声がした。
間違いなく勇の声だ。
泣いてるところなんか見られたくないのに。
「……な…に」
振り向かずに応える。
「こっち来て。話がある」
勇に無理矢理手を引かれる。
「………っ」
涙を泊めるのに必死で、抵抗する間もなかった。
勇が入ったのは普通の喫茶店。
一番奥の静かなテーブル席に座らされる。
向かい合う形で。
これじゃ、どう頑張っても泣いてること丸わかりじゃん…。
「さっきの電話、悪いけど聞こえてたよ」
……。
じゃあバレたってことだ。
私がスパイなの。



