Miseria ~幸せな悲劇~



「……………………」


風花は呼吸器をつけたまま死んだようにベッドの上で眠っていた。スパゲッティ状態とはよく言ったもので、彼女の身体には、美花には理解できない機能を持った管がいくつもつながれていた。


「あら美花ちゃん、いつもありがとね」


病室の中で風花の点滴を交換していた若い看護師が美花を見て言った。


「いいえ、それより、風花の具合は……?」


「…………」


看護師は美花の言葉にうつむきながら答えた。


「今日もまだ、眠ったままで……」


「…………」


看護師はそう言い残すと静かにお辞儀をして病室から出ていった。


美花はベッドの近くにある椅子に腰かけると、風花の頭を優しく撫でながら言った。


「風花、今日は大野先輩とサッカーしたんだ。あの先輩本当にうまくてさ。風花と同じぐらいかな? 風花もきっと、ビックリすると思うよ……」


懸命な美花の声に風花は答えることはない。もしかしたら、聞こえてすらいないのかもしれない。


しかし、それでも、美花は毎日のように風花に語り続けていた。


それがきっと、奇跡につながると信じていたのだ。誰もが諦めてしまった風花が意識を再び取り戻す奇跡を、美花だけが信じていた。