大野と別れたあとメイ達は祐希の家にお邪魔していた。


水島宅は古びた二階建ての一軒家で、祐希の部屋は二階の一番奥にあった。


部屋についたあと、美花にはメイ達が知っている限りで喰イ喰イのおまじないについて説明した。


意外にもおまじないや心霊現象には否定的でない美花は、興味深そうに話を聞いていた。


「へぇ、うちの学校にそんなおまじないがあるんだな。まったく知らなかったわ」


美花はまるで自分の家のように勉強机にあるキャスター付きの椅子に深くこしかけながら言った。


「美花はサッカーと喧嘩にしか興味がないからね」


ベッドで横になりながら雑誌を読んでいたメイが茶化すように美花に言った。


「ねぇ、やっぱり大野は喰イ喰イを呼び出したと思わない? なんか態度も怪しかったし」


詩依はどうやら大野を疑っているようである。


「んー、どうだろうな。でも大野先輩すっごくサッカーが好きだからさ。怪我した時は手がつけられないくらい荒れちゃってたし……だからまぁ、藁をもつかむなんとかでそういう変なおまじないに手を出すこともありえるかもな」


美花はそう言いいながら立ち上がると祐希の机の上にあったメモ帳の紙を一枚抜き取った。


「ていうかさ、美花達はもう喰イ喰イが存在するって思うわけ? 私は半信半疑っていうか…普通ありえないし」


メイにとって少なくとも短期間では完治不能の足が一日で治ってしまったこと以上に、喰イ喰イという神様に足を治してもらったということの方が『ありえない話』であった。


たしかにメイから見ても大野の態度は怪しかった。だか、それを根拠に喰イ喰イという神様の存在を認めることはできない。