「まさか…本当なんですか?」


メイは不審そうな顔で大野に尋ねた。


しかし、


「ふっ、くだらない」


大野はかなり冷めた態度でぶっきらぼうに答えた。


「いるわけないだろ、喰イ喰イなんて!だいたい、この足は私が自力で治したんだ。そんなありもしない噂を広められても困るね!」


大野は腫れ物のに触れられたような態度でメイ達を遠ざけた。


「さぁ、遅くなるからもう帰れ。美花もとっとと着替えてこい!」


大野はそう言い残すどこかへ行ってしまった。これ以上怪我に関してとやかく詮索されたくはない。といったところだろうか。


「は、はい」


美花は急に不機嫌になった大野を見てきょとんとしていた。そもそも美花は喰イ喰イのおまじないを知らないようだ。


「なによ、あいつ、態度悪」


詩依は不満げに舌を出した。身長が低いわりに詩依は度胸があった。


「……でもちょっと怪しいかもね」


祐希は大野の言動に終始びくついていたが、そんな彼女の態度に違和感を覚えたようだ。


現にメイから見ても、喰イ喰イの話を切り出した時から、大野は明らかに動揺していた。


それは奇跡的に治ったとされる足の怪我に関係しているのだろうか?


メイの頭にはそんな思案が過った。しかし、この時はまだ、メイは喰イ喰イという非現実的な神様の存在を信じるまでには至っていなかった。


後にこのおまじないが彼女達の運命を大きく変えることも。この時はまだ、知らない。