PM 10:37。地下鉄のホームは、突如起こった悲劇に騒然としていた。
「祐希、祐希、どこよ………? 返事してよ………」
祐希の突然の死を目の当たりにしたメイはホームから身を乗り出して線路の中を覗いていた。
メイの声は想像を絶する悲壮感と哀惜でガラガラに震えていた。
「ひひ、ふへへ………」
祐希を殺した張本人であるフードを被った男は薄笑いを浮かべながらメイにナイフをちらつかせる。
「祐希、祐希……」
メイはそんな男に一切の気をむけられないほどに混乱していた。男はどんどんメイに迫る。
「祐希ぃぃぃぃぃ………!」
メイは答えるはずもない声を探し続け、彼女の名を叫び続けた。
そんなメイに、男は祐希の血のついたナイフを振りかざして迫った。
「メイーーー!!!!!!!!!」
詩依は男の存在を気づかせようとメイにむかって全力で叫んだ。
「はっ……!」
詩依の声に反応してようやくメイは男の方をむいた。同時に、男は大声を出した詩依を睨んだ。
「うっ、うぐぅ…………」
男に睨まれて、詩依は完全に身体が萎縮した。
そして、あまりにも残酷な親友の死は、詩依の心に深い傷と恐怖を植えつけていた。
全身の毛穴が開く感覚がする。
神経に力が入らず、恥部の隙間から生暖かい液体がしたたる。
詩依はそれ以上、男を止めることも、メイを助けるため動くこともできなくなった。
「あ、ああ…」
ただ動けないまま、再びメイに迫る男を見つめていた。



