それからしばらく、祐人は祐希と電話をしながら歩き続けた。
「僕、中学卒業したらすぐに働くよ。父さんがいない分、僕が頑張るから、だから………」
やがて車道を走る車がなくなってくる。
人気がない、交差点が近づく。
「僕たちだけでも幸せになろうよ。これからは、姉ちゃんのこと、僕が守るから…」
横断歩道近くの電柱には無数の花が供えられている。
その花はいつか美花が事故によって命を落とした風花の友人に捧げられた供物である。
「………………」
その花に混じって一体の人形が置かれていた。血まみれの人形は姉、祐希と同じ姿をしていた。人形は首がギコギコと動き祐人を睨む。
「姉ちゃん? どうしたの?」
祐人は電話のむこうで涙を流す祐希にむかって言いながら、横断歩道の真ん中に立った。
「早く帰ってきてね。玄関あけとくから………」
祐人は祐希に言った。
「うん分かった。お休み、祐人………」
祐希は電話を切ろうと祐人にほんの少しの別れを告げた。
その瞬間、車の光が祐人に迫る。
「………………」
逃れられない、悲劇のルール。
彼らもまた、喰イ喰イの定めた不幸の連鎖に抗うことはできなかった。
「うん、おやすみ、姉ちゃん………」
目をそらしたくなるほど眩しいライトがすくそこまで迫ってくる。奇しくも、祐希の姿をした人形は、美花が供えた花束の隣でその光景を見守った。
怖い。
祐人は心の中で叫ぶ。
怖い!!!!!
なんで僕はここに………?
でも、身体が動かない………誰か……!!!
運命から逃れた祐希が背負った不幸の代償。祐希は美花の代わりにその肉親を奪われる不幸を背負う。
誰かっ!!!!!!!!!!
助けて!!!!!
姉ちゃん……!!!!!!!!!
ガシャアアアアアアアアアアンンンンンンンンン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



