祐希が男に襲われる数分前。祐希の弟、祐人は携帯を握りしめたまま裸足で夜道を徘徊していた。
「あ、ああ…」
祐人の表情は虚ろで死人のように青白い。一目で彼が正気でないことは分かる。
ただ夜道には街灯の明かりと行き交う車の光がわずかに祐人を照らしていた。
ジリジリジリジリ……と。祐人が手にしていた携帯が鳴り響く。
「もしもし、姉ちゃん………」
祐人は歩きながら携帯に出た。
「………えっ、どうしたの? 僕は別になんともないけど、化け物って?」
しばらく携帯で話す祐人であったが、まるで声帯と身体の筋肉が分離しているかのように、顔は常に無表情であった。
「もしかして…」
祐人はゴミ溜めの中に躊躇することなく足を踏み入れた。そしてそこにあったガラスを裸足のまま踏みつけた。祐人の足から血が流れる。
「また心配かけちゃったんだね、僕……」
しかし、祐人はまるで一切の痛みを感じていないかのように表情を変えることはなかった。



