「クスクスクス、クスクスクスクスクスクスクスクス……」
メイが叫ぶと、廊下には子供の笑い声が響いた。
それと同時にヒールで歩く音が聞こえてくる。
「メイ…」
やがて闇の中から漆黒のドレスを着た少女が現れた。
「追いかけっこはもうお仕舞いなのかしら…? 私に…それを渡す気になったの…?」
無数の人形を引き連れた喰イ喰イはメイの手にあるセーラー服を指差した。
「喰イ喰イ、なんであんたは、そんなにこれを欲しがるの?」
メイは息を切らせながら喰イ喰イに尋ねた。
「…………」
しかし、喰イ喰イはなにも答えずにメイに歩み寄る。
「もしかして、これが朝比奈朱実のものだから。あんたはこれを取り返そうとするの?」
メイは思いきってその名前を口にした。すると周辺の空気はずっしりと重くなった。
「あなたのことは傷つけたくないんだけれど…」
このときの喰イ喰イの声はまるで氷のように冷たい情感を含んでいた。
「もし、私があんたの言うとおりにしたら、二人と、祐人に手を出さないって約束できる?」
メイは後退りしながら喰イ喰イに言った。
「いいえ、あなたの頼みでも、私の悲劇を変えることはできない。だけど…」
後退りをするメイは人形の残骸を一体、意図せず踏みつけた。
「だけど、あなたなら。メイ。あなた一人なら助けてあげるわ……」
喰イ喰イは悪魔のような笑みを浮かべてメイに言い寄った。
「…………」
メイはその言葉に沈黙したまま俯いた。
「さぁ、渡して、メイ。私は、あなたが………」



