「朝比奈朱実(アサヒナアケミ)。人形の主……?」


魅里が記した赤字の文字を詩依が何を意味しているのかその全てを理解できたわけでわない。


しかし、『人形の主』という言葉から一つの最悪の可能性が彼女達の頭を支配した。


「いる。この中に………」


文字の位置からして朝比奈朱実は対応する右ページの写真の前列の右端から五番目に座っている。


「祐希、あなたがたしかめてよ…」


詩依は震えながら祐希に目配せした。


三人の中でもっともあの少女の顔を鮮明に覚えているのが祐希だったからである。


「嫌…」


しかし、祐希は怯えた様子で首を横にふった。


「ねぇ、みんな…」


メイは箱の中からさらに何かを引っ張り出した。


「これでもう決定的かな、あいつの正体…」


「えっ!!」


メイの手には古いセーラー服が握られていた。そのセーラー服は腹部の辺りに大きな穴が空いており、赤黒く見えにくかったが血が散乱としていた。


「それ、昔の凪瀬校の制服だよね……」


詩依と祐希は同時に息を飲んだ。


その制服は2000年度にメイ達が使用する制服が採用されるまで使われていたものだ。メイ達も実物を見たのは展示室に飾られていたものだけである。


もちろん、92年卒もその制服であった。


そして朝比奈朱実もその制服を着ていたはずである。


「喰イ喰イの正体は朝比奈朱実………おそらく、私達と同じ凪瀬校の生徒だった人だ…」


メイは強くそのセーラー服を握りしめた。


それからゆっくりと集合写真の中で前列に座る黒髪の少女を指差した。