「あ、あれ…」
声がする方を見ると、そこには一体の人形が消火器を設置する横に座っていた。
「………」
その人形は古びたフランス人形で目を閉じたまま眠ったように座っている。
「まさか、君がしゃべったんじゃないよね? はは、でもなんでこんなところに人形なんて」
麻衣は不気味なその人形に話しかけながら人形を持ち上げた。よく見ると昔、可愛がっていた人形に似ていて懐かしく思えた。
「ねぇ? 君? メイさん見なかった? 私ね、メイさんのこと追ってここに来たんだけど?」
麻衣はふざけ半分で人形に尋ねた。
「なんてね、まさか答えるわけないよね」
そう言って麻衣がにこりと歯を見せたとき、
「……メイ?」
「えっ…!」
人形は静かにそう呟いた。
人形の蝋で固まっているはずの口角がたしかに動いたのだ。
「…知ッテルヨ、私ネ、メイノコト」
「……うわっ!!!」
麻衣は思わず人形を手放した。
人形はぐったりと地面に落下した。



