しかし、その時、ひとつの考えがメイの脳裏を過った。
それはメイ自身ではなく、祐希の『不幸』についてである。
メイは祐希の不幸に関して、思い当たる節があったのだ。
「ねぇ、祐希、そういえばさ…」
メイはお菓子をつまむ祐希の表情をうかがった。もしかすると、祐希が不幸を喰べる幸福の神様のおまじないに関心を抱いたのも、この不幸が原因かもしれない。と思ったのだ。
「祐希はあるの? その、喰イ喰イとかいうのに食べてもらいたいこと」
「えっ…」
メイが遠回しに祐希に探りを入れた。すると、祐希はお菓子を食べる手を止め考え込んだ。どうやら、メイの読みは当たっていたらしい。
「うーんと、どうなんだろう。食べてもらうっていうか、解決してほしいことなら、やっぱり、あの人のことかな…」
祐希はそう言うと少し視線を落としてから考え事をするように頭を下げた。
「あの人って祐希のお父さんのこと?」
メイがそう尋ねると、祐希は小さく首を縦に振った。
祐希は父親との関係で問題を抱えていたのだ。
「でもね、今はあんな人だけど、もし神様に食べられちゃったり、家からいなくなったりしたら、きっと、私も耐えられないくらい悲しいんじゃないかって思うよ…私にとっては、大切な家族であることにかわりないからね」
祐希はいつもより重たい口調で言った。
メイは祐希が父親との関係で悩んでいたことは知っていたが、それもどうやら思っていた以上に複雑なのかもしれない。
「それって……」
喰イ喰イのおまじないもその悩みを解決する方法を自分なり考えた末にたどり着いたのだろうか。
もしそうなら、おまじないなんかより、友達の私が力になってあげないと。おせっかいかもしれないが、メイはそんなことを考えていた。



