例えば、美花と大野先輩の不幸には若干の違和感がある。もし、試合中に大野先輩が怪我をした出来事を不幸とするなら、美花もサッカーの試合中に怪我をするはず。
メイは美花が怪我をした日のことを回想した。
思い出すだけでも辛く、悲しい記憶の数々であったが、それでも、今、喰イ喰イと戦い抜くための手がかりがあると信じて必死に記憶を辿った。
鈴木先生はたしか、美花が倒れたのは朝方、家にいる時だって言っていた。だとしたら、喰イ喰イは不幸の結果だけを背負わせて、それまでの過程を省く場合があるってこと?
だとしたら祐人も突然、意識を失って倒れてしまうこともあり得るのだろうか?
まるで交通事故にあったかのように。
いや、でも、
もし、私が大野先輩なら、
私は何を不幸と思うだろうか?
試合中に怪我をしたこと?
それともサッカーができなくなったことそれ自体?
仮に怪我そのものじゃなくて、サッカーができなくなったこと、引いては、夢を絶たれたこと。それ自体が大野先輩が喰イ喰イに消させた不幸だったとしたら?
それなら美花が試合中ではなく、家の中で突然、サッカーができないほどの怪我を負ったとしても、夢を絶たれたという意味では、不幸を背負ったことになる。
だとしたらどっちだろうか…?
おそらく美花が風花の交通事故を不幸とみなしたのか。それとも、風花との死別そのものを不幸とみなしたのかで、祐人がいつ喰イ喰イに襲われるかが変わってくる。
前者なら、祐人は交通事故にあってから植物状態となる。後者なら、祐人が突然、植物状態となって死ぬこともありえる。
美花がいない以上、それらを確める術はない。
でも、結論はだいたい決まった。
「どちらにせよ。今は一刻を争う事態……」



