祐希は右手で思いっきり机を叩いた。苛立ちが顔からにじみ出ていた。
「祐希…!」
メイは今にも取り乱しそうな祐希をたしなめた。しかし、祐希は冷静さを保てずにいた。
「私のせいだ! 私がいけないんだ! 喰イ喰イなんかに頼るから、祐人を危険な目に…!」
祐希は涙ながらに叫んだ。
祐人のために喰イ喰イを呼んだつもりが、結果的に祐人を危険にさらすことになった。
その思いが祐希を苦しめるのだろう。
「だから落ち着いてって! 祐希がおじさんを止めなかったら、二人ともあの時殺されてたんだよ!」
祐希から聞いた話では、父親の晋吾が祐希達を巻き込んで死のうとしていたことは明らかだった。
だから二人が助かるためには、喰イ喰イを呼び出す以外に方法がなかったこともたしかだ。
「だけど…!」
祐希は乱暴に涙を拭きながら頭を抱えた。
「大丈夫……」
メイはそう言うとおもむろに机の上に一枚の紙を用意した。
祐希と違い、メイの頭は冷静だった。
だからこそ今しなければならないことも、彼女の中でははっきりしていた。
「大野先輩や詩依の場合からして、喰イ喰イが不幸を背負わせるのは、多分、不幸を食べた直後から二日…」
メイはそう言って紙に美花、詩依、大野先輩が喰イ喰イを呼び出したであろう時から、前回の不幸を背負うまでの期間を書き出した。
メイが知る範囲では、美花は恐らく儀式をした翌日。
そして大野先輩は、サッカー部に復帰してから火事になるまでに最低でも一日以上は経過している。
詩依は不幸を背負わされた自覚がないほどに記憶を書き換えられていたが、これは不幸を消してからすぐに別の不幸を背負ったことを意味するのだろう。
「さっき見る限り、祐人には今、特に変わったところはない。だからまだ、祐希には大野先輩みたいに一日くらいは不幸を背負う猶予があるんだと思う」
そもそも詩依が背負った不幸の内容が子供の時からの心臓病の記憶と傷だとしたら、詩依が背負わされた不幸に自覚がないとしてもおかしくはない。
メイは髪をいじりながらあれこれと思案をめぐらせた。



