そんな問題児グループの学校での楽しみは、放課後に教室を貸切り状態で広々と使い、プチ女子会を開くことだった。
部活動に所属していない二人はほぼ毎日、下校時間間近まで誰にも邪魔されずに教室を占領することができた。
この日も二人は大量のお菓子を消化しながら、また朝のように基本的にはユルく、それでいて少しだけゲスいトークを一時間近く続けた。
勉強の愚痴。クラスの子の噂話。新しい化粧品、ファッション。流行と趣味、お笑い芸人…あと、ちょっとした悪口等々である。
メイ達の女子会はいつものように下校時刻ギリギリまで続いていた。
やがて会話もなんとなくつき始めた頃、祐希は唐突にある都市伝説について話題をふった。
「ねぇ、メイはさ、喰イ喰イ(クイクイ)のおまじないって知ってる?」
祐希がメイに尋ねた。
「ああ、幸福の神様ってやつね、たまに聞くけど、詳しくは知らないかな…」
メイはお菓子を食べながら答えた。
例えば、チョコレートに好きな人のイニシャルを刻んで食べる。
もしくは、仲直りしたい子とすれ違いざまに耳たぶを触る等。祐希は女子中学生が信じるようなおまじないをよく話題にする。
「で? それがどうしたの?」
生意気に精神年齢が高く大人びていたメイは、そういったおまじないにはほとんど関心がなかった。もちろん、本気で信じたこともない。
そのため喰イ喰イに関しても、
はぁ、祐希また変な噂話に興味もったんだ。
といった具合に冷めた印象でしかなかった。



