晋吾は個人事業に失敗し多額の借金を抱え、さらには20年近く自制していたはずの酒に手を出してしまった。
「俺にはあいつが必要なんだ。有香。なのにおまえはなんで………なんでどこにもいないんだ……」
挫折や失敗を乗り越える度に、いつも側にいてくれた有香の笑顔。
忙しさの中で忘れていたはずの妻への思いが、数年の時を経て彼を苦しめた。
その思いが、理不尽な暴力となって祐希や祐人に向かう。
惨めな自分の虚遇を慰めるために、守るべき者を傷つけた。あとに残るのは、深い罪悪感と自己喪失感だ。
この日、彼の心は限界まで達していた。そして追い詰められた晋吾は、ある決断をする。
「もう終わりにしよう、有香、俺たちはおまえとまた…」
晋吾はゆっくりと立ち上がり台所へむかった。



