翌日。2013年7月9日。詩依とメイは学校の屋上で町を見下ろしながら話していた。


「そう。美花は風花のためだったのね……」


メイは詩依に昨日の風花の話をした。詩依はしみじみとした表情で苦痛そうに顔をしかめた。


海が近い。学校の屋上からは夏のきれいな海が見えた。


メイはこの景色が好きだった。少し海の方へ耳をすませば、海辺で遊ぶ誰かの声が聞こえてきそうな気がしたからだ。


しかし、この時のメイには、なぜか海がいつもよりずっと遠く、そして氷のように冷たく思えた。


「私達、何も知らなかった。美花のこと。いつも美花の側にいたのに、美花の友達なのに……それが、美花を追い詰めてしまった……」


詩依はメイの顔を見てうつむいた。そして、こもった声で言った。


「美花は……抱えきれなかっただけよ。他人の不幸を……もし、美花がカラクリを知っていたなら、自分を犠牲にしてまで喰イ喰イを呼び出すことはなかったはずよ……」


メイは詩依の言葉がひっかかった。