Miseria ~幸せな悲劇~



「痛っ…!」


晋吾は祐希を突き飛ばした。祐希はその勢いで地面に倒れた。


「やめろ、あいつみたいなことを言うな……」


晋吾は明らかに不機嫌そうな顔をした。あいつみたいなこと。それは祐希の母のことを言っているのだろう。


もともと酒癖が悪い晋吾に酒を断たせ、仕事に打ち込めるようにサポートをしていたのが母だった。そんな母が死んで、晋吾は死ぬもの狂いで働いていた。まるで悲しみを感じる時間を自ら削るように。


しかし、そんな晋吾も最近になってまた酒を飲み始めた。仕事もおろそかになった。ついには暴力まで振るうようになった。本当は優しい父であるはずなのに。