Miseria ~幸せな悲劇~


「………………………………お姉ちゃん」


すぐ近くで美花を呼ぶ声がした。長らく聞くことができなかった、大切な人の声だ。


「なっ……!!!!」


一体、どこから現れたのだろうか。見るとそこには、風花が美花と同じテーブルの右側にある席に座っていた。風花も美花と同じく赤色のドレスを着ている。顔にメイクまで施され着飾った風花はまるで別人のようだった。


「……ふ、風花!」


美花はぐったりとした風花の姿を見て思わず立ち上がった。再びテーブルがガタンと揺れ、皿に盛りつけられた料理が浮き上がった。


「座って……」


喰イ喰イが美花に向けて手をかざした。


「わっ!」


美花は腕を何かに引っ張られたように席に押し戻された。


「な、なんだよ、今の……?」


「…………」


驚く美花だったが、喰イ喰イは何事もなかったかのように料理を食べ続けた。どうやら、食事を邪魔されたことが気にくわなかったらしい。