Miseria ~幸せな悲劇~



「……な、なぁ、あんた何者なんだよ?」


美花は恐る恐る少女に尋ねた。少女から発する独特のオーラは、美花でさえも緊張を感じた。


「……喰イ喰イ。あなた達からはなぜかそう呼ばれてるわ……」


黒髪の少女、喰イ喰イは食事の手をとめて答えた。青い瞳が美花の目を見据える。


「喰イ喰イ!? あんたが幸福の神様なのか?」


喰イ喰イは美花の言葉に小さく頷くと、また、料理を食べ始めた。


……そうか、そういえば私は昨日こいつを呼び出す儀式をしたんだっけ。美花はぼんやりと昨日の出来事を思い出した。


「そ、そうだ、風花…! おい! おまえなら本当に風花を治してくれるんだな!?」


美花が喰イ喰イに言った。喰イ喰イの儀式に成功すれば、夢の中に喰イ喰イが現れて自身の不幸を食べてくれる。美花はメイ達から聞いたおまじないの内容を思い出した。


「…………」


しかし、喰イ喰イは一瞬、美花を見ただけで、すぐにまた料理を食べ出した。ちびちびと小指の先に収まる程度の肉を一口づつ食べていく。


「おい! なんとか言えよ…!」


美花が喰イ喰イにむかって叫んだ。美花が前のめりになった拍子に、テーブルはガタンと揺れた。