恋人は君以外で

バカじゃないの。

一目惚れなんてバカのする事だって、散々あんたの顔に惹かれた女の子たちに向けて言ってたくせに。


私は静が恋に落ちる瞬間に立ち会ってしまった。


きっと彼の頭の中では桜色の花吹雪が舞って、福音がものすごい音を立てて鳴り響いている事だろう。



「二階堂は夏目の後ろな、そこのあいてる席だ」


先生の指示に、こくんと頷く姿も美人がやってみせるとあざとさよりも、幼さが強調される。

私ですらその仕草に見とれてしまったのだから、静の反応なんて見ていなくてもだいたい察することができた。

謎の美少女にクラス中、いや、学年中が興味津々だった。

休み時間は机の周りに人垣ができ、移動教室で廊下を歩けばすれ違った生徒達が振り返る。