メトロの中は、近過ぎです!

「俺が行きます」

戸田君が名乗り出た。

「いや、戸田は別に行ってほしいとこがある」

主任の頭の中にはやっぱり次の作戦が入っている。

「主任。俺が行きます」

大野さんがもう一歩その距離を詰める。

「浜松工場の中を教えてもらえたら、俺一人でもなんとかなると思います」
「しかしな…」

南主任が答えを渋るって珍しい。

「大丈夫です。運転は得意な方なので明け方までには積んで戻ってこれると思います」
「トラックの運転は?」
「前の現場で4トン運転してました」

4トン?!
みんなが目を見張った。

大野建設の後継ぎとしてここに来る前にもいろんなところで現場を学んでいたとは聞いていたけど、トラックまで運転していたなんて意外過ぎる。

「わかった。大野。浜松はおまえに任せてもいいか?」

南主任の銀縁の眼鏡が光ったような気がした。

「はい。任せてください」

大野さんもそれに応えて頷いている。

仕事に集中してる男の顔。
責任感と頼られた嬉しさと、妙にカッコ良く見えるのは、しょうがないのかもしれない。

浜松までの往復、ずっと高速道路の運転だし、長距離だし、しかも浜松の工場長は難しい人だとうわさも聞いたことがあるし……

胸の奥がザワザワしてきた。