急に立ち止まった私に大野さんがふつかった。

「あぶねっ」

「あ、すみません…」

大野さんの無事を確認して、電車の方に視線を戻すと、
5メートルほど向こうに立ち止まっている人がいて、

末岡さん……

真っ直ぐこっちを見て止まっている。

これはもう私じゃないって取り繕う隙間もなく、かと言って隣の大野さんが透明人間になれる訳でもないので、完全に見られてしまった。
ばれてしまった。

彫刻のように整った顔は無表情で、何を思ってるのか分からない。

「どうした?」

私が一向に動かないので、大野さんも私の視線の先を追った。

3人の視線が絡み合う。

大野さんはぺこりと頭を下げたけど、末岡さんはそのまま前の車両の方に立ち去っていった。

まるで他人事のように…

私は全身の血が引いてしまったようで、下を見たまま末岡さんが通り過ぎるのを待つしかなかった。

ーーー終わったーーー