課代が脱いだスーツとワイシャツをハンガーにかける。

それが、なんだか奥さんみたいに思えて…

落ち着け私。
久しぶりの男の来訪にトキメクな。
相手は会社の人で上司。
絶対になんかあっちゃいけない人。
絶対に惚れちゃいけない人。

それでもただ座って待っている気にもなれず、ローテーブルに赤ワインとグラスを二つ並べて、軽くおつまみを作ってみたりした。

実家から送ってきた梅干を潰して、乱切りにしたきゅうりと和える。

もう一つはチーズをスライスしてクラッカーに乗せたもの。

そんなに凝ってるものじゃなく、敢えて意識しないようにシンプルに…
でも、ただ袋から出したお菓子を盛り付けただけとは違うという、そんな姑息なアピールもしたい自分に嫌気が差す。

カチャ

後ろで小さく鳴ったドアに、課代がお風呂から上がってきたのが分かった。

「……」

どうか頬が赤くなってませんように……