「悪いな。森田は悪い奴じゃないんだけど…こいつ天才肌なんだよ。だから他人がついていけないことが、わかんないんだよなー。な、森田」

中川兄さんの方が森田さんの一つ年上で、大学の先輩でもあるらしい。
その頃から森田には懐かれていると、前の飲み会で話していたのを思い出す。

「そんなことないですよ。実際の画面でやればみんな分かりますってこれぐらい…」

森田さんのその言葉に、どうか実際の画面でやる時には中川兄さんが教えてくれますように…と切に願った。

「ははは…佐々木。そんな顔するな」

中川兄さんにはばれていたようだ。

「鶴見では俺が教えるから…でもシステム上で不都合なことがあったらすぐに森田に言えよ。こいつは仕事はすごいから」
「そうなんですか?」

何の気なしに言ったら、森田さんに睨まれた。

「あぁ。こいつの横にいたら、俺って凡人だってつくづく実感させられる…」

そう言った中川兄さんの顔が少し寂しそう。

「兄さんは、説明の天才ですよ」
「そ、そうか?」
「はい。いつも分かりやすく教えてくれるじゃないですか」
「そうそう」

隣で戸田君も頷いている。