「俺が大野建設継がないって言ったら、姉貴が一番喜んでたよ」
「え?」
「好きな人がいたんだ。獣医だって。でもお人よしらしくて、経営とかは無頓着なやつだから、姉貴がいないと生きていけないって言ってたぞ」
「え…それじゃ…」
「そう。姉貴も我慢してたの。今頃はそいつのところに行ってんじゃないかな」
大野さんはやんちゃな弟の顔で笑った。
「俺が継がなかったら、姉貴が婿養子もらって…って親父は考えてたらしいけど、姉貴が嫌がってんだよ」
「…そう」
「誰も会社を継ぎたがらないって、親父寂しそうだった」
大野さん家で見た大野社長は確かに不器用そうに見えた。
「だからさ、親父は余計母さんべったりでさ。今日も下まで送って来てんだぜ。情けないだろ?」
「大野社長が?」
「そう。自分は運転手付きの車で出勤してるのに、今日は母さんの運転手」
あはは…とえくぼが見えるまで笑っている。
「だから、会社も親父も姉貴も母さんも俺が守る」
大野さんは低い声でそう言った。
たぶん自分自身に言い聞かせているんだろう。
それだけの人を守ると言い切った大野さんが男らしかった。
「どうなるか分かねーけどな。俺がみる。
それとおまえの子供も俺がみる」
「…は?」
黙って聞いていたけど、突然話が私のことになって思考が停止する。
「え?」
「好きな人がいたんだ。獣医だって。でもお人よしらしくて、経営とかは無頓着なやつだから、姉貴がいないと生きていけないって言ってたぞ」
「え…それじゃ…」
「そう。姉貴も我慢してたの。今頃はそいつのところに行ってんじゃないかな」
大野さんはやんちゃな弟の顔で笑った。
「俺が継がなかったら、姉貴が婿養子もらって…って親父は考えてたらしいけど、姉貴が嫌がってんだよ」
「…そう」
「誰も会社を継ぎたがらないって、親父寂しそうだった」
大野さん家で見た大野社長は確かに不器用そうに見えた。
「だからさ、親父は余計母さんべったりでさ。今日も下まで送って来てんだぜ。情けないだろ?」
「大野社長が?」
「そう。自分は運転手付きの車で出勤してるのに、今日は母さんの運転手」
あはは…とえくぼが見えるまで笑っている。
「だから、会社も親父も姉貴も母さんも俺が守る」
大野さんは低い声でそう言った。
たぶん自分自身に言い聞かせているんだろう。
それだけの人を守ると言い切った大野さんが男らしかった。
「どうなるか分かねーけどな。俺がみる。
それとおまえの子供も俺がみる」
「…は?」
黙って聞いていたけど、突然話が私のことになって思考が停止する。

