「大丈夫だった?」

まるで何もなかったかのように微笑んで私を覗き込む以前のようなシンさん。
その仕草も優雅で、やっぱり大人だなって思ってしまう。

「はい。ご心配おかけしました」

そう言うと、小さく首を横に振った。

「いや。悪いのは俺の方だよ…おまえに執着してたようだ」
「執着?」
「いつもはそんなことないんだけどね。マホに言われた通りだよ。俺らしくなかった」
「シンさん…」
「マホ。おまえは最初から俺を見てなかった」
「……」
「それが分かってたから、つい意地になって……」
「ごめんなさい」
「いや。おまえが謝ることはないよ。悪いのは俺だから…」

それはシンさんの優しさなのだと分かった。
本当に悪いのは私なのに……

「ニューヨークに行くよ」
「ニューヨーク?」

シンさんを見上げると目を逸らされた。

「おまえに出会う前から話が来てたんだ。断ってたんだけど。マホ……一緒に行く?」

シンさんの顔は見れなかったけど、震えている気がした。
胸が痛い。
私は静かに首を横に振った。

「だよな…」

シンさんは、ふーっとため息をはくと、優雅な微笑みで私を見た。